ルカによる福音９章51-62節

　イエスは天に上げられる時期が近づくと、エルサレムに向かう決意を固められら。そして、先に、使いの者を出された。彼らは行って、イエスのために準備しようとサマリア人の村に入った。しかい、村人はイエスを歓迎しなかった。イエスがエルサレムを目指して進んでおられたからである。弟子のヤコブとヨハネはそれを見て、「主よ、お望みなら、天から火を降らせて、彼らを焼き滅ぼしましょうか」と言った。イエスは振り向いて二人を戒められた。そして、一行は別の村に行った。
　一行が道を進んでいくと、イエスに対して、「あなたがお出でになるところなら、どこへでも従って参ります」という人がいた。イエスは言われた。「狐には穴があり、空の鳥には巣がある。だが、人の子には枕するところもない。」そして、別の人に、「私に従いなさい」と言われたが、その人は、「主よ、先ず、父を葬りに行かせて下さい」と言った。イエスは言われた。「死んでいる者たちに自分たちの死者を葬らせなさい。あなたは行って神の国を言い広めなさい。」また別の人も言った。「主よあなたに従います。しかし、先ず家族にいとまごいに行かせて下さい。」イエスはその人に、「スキに手をかけてから後を顧みる者は、神の国にふさわしくない」と言われた。

ジョージ・W・ブッシュ大統領主演のドキュメンタリー映画「華氏９１１」が全米で大ブレイク中。
あ、これは映画のキャンペーンではない。フセインを倒せ！とブッシュ大統領を支持した国民が、今や、反ブッシュを叫びだした。あれは石油の利権が欲しかったのだと、当初から言われたことなのに、何で今更という感じがしないでもない。９１１は言うまでもなく、アメリカがテロにあった日。渡りに舟とばかりにイラク戦争。簡単に乗った国民も何と単純なことか。今更、反対を叫んでも遅すぎる！怒りのようなものがこみ上げてくやしい。
　ひるがえって、「このお方を何と心得る！」通せんぼうをされたイエスの後でヤコブとヨハネが叫んだ。「即派兵を！サマリア人に火の雨を！」イエスが振り向いて言われた。「逃げるが勝ち！急がば回れ。」そして、一行は別の村に行った。
　
　捨てる神あれば拾う神有。一行が道を進んでいくと支持者が続出した。「あなたとなら、たとえ火の中水の中…。」しかし、イエスは、人々の熱狂的？支持に浮かれたりはしない。私の生活は狐や鳥以下。ガクッ。どんなもくろみがあったかは知らないが、イエスの言葉に顔を曇らせて去る支持者。「あなたは私に従いなさい。」もう一人の支持者に声をかけた。「先ず父を葬りに…。」案の定、駆け引きが始まった。「じゃあ、そこで神の国を言い広めるがいい。」「家族にいとまごいを…。」とどめを刺すかのようにイエスが言われた。「スキに手をかけてから後を顧みてはいけない。」
　　
　サマリア人との無用の争いを回避し、かつ、冷静に支持者を識別し、ひたすら神の国の利権のみを追求したイエス。そこでは、あらゆる人間的妥協が排除され、支持者の善意すら手放しで喜んで貰えないという厳しさが前面に押し出されてくる。それは、神の国の私物化を許さないために必要なことだったのだと思う。
　神の国の私物化？平たく言えば、教会内のあらゆるもめ事を思い起こすなら、そこには必ずと言っていいほど、イエスの主義主張が、個人の主義主張にとって代わられている。みんな善意なだけに、「私物化なんてとんでもない」と怒る。神の国は、あらゆる利権が絡む現実世界にあって、唯一、全てから自由でなければならないのだが…。

　イエスの支持者に対する厳しい要求は、今日の教会の姿を見越してのものだったとつくづく思うこの頃である。今日の第２朗読でパウロがいみじくも言っている。
　「自由を得させるために、キリストは私たちを自由の身にして下さったのです。だから、しっかりしなさい。奴隷のくびきに二度とつながれてはなりません。兄弟たち、あなたがたは、自由を得るために召し出されたのです。ただ、この自由を、肉に罪を犯させる機会とせずに、愛によって互いに仕えなさい。」

　イエスの真の支持者を目指して、日々精進のほどを…。愛を込めて。