聖域なき改革の手は伸びて・・・
年間第16主日のミサ説教音声(2005.7.17)
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知12:13・16-19
すべてに心を配る神はあなた以外におられない。 だから、不正な裁きはしなかったと、証言なさる必要はない。
あなたの力は正義の源、あなたは万物を支配することによって、すべてをいとおしむ方となられる。あなたの全き権能を信じない者にあなたは御力を示され、知りつつ挑む者の高慢をとがめられる。力を駆使されるあなたは、寛容をもって裁き、大いなる慈悲をもってわたしたちを治められる。力を用いるのはいつでもお望みのまま。神に従う人は人間への愛を持つべきことを、あなたはこれらの業を通して御民に教えられた。こうして御民に希望を抱かせ、罪からの回心をお与えになった。
(日本聖書協会『聖書 新共同訳』 より)
郵政民営化法案が成立するのかしないのか。議論は尽くしたとする当局側と反対派のせめぎ合いが続く。良かれと思って改革を断行しようとする側の言い分に対して、悪しき改革だという反対者の主張は国民の半数にも上るという。
政治には素人の僕に言わせれば、「聖域なき改革」の文字がひところ新聞に踊ったが、改革の手が本丸に延びようとしたとたん、「チョ、チョット待ってくれ!」と周りがあわてだした感じが否めない。改革を標榜したした人を選んだのだから、どうして、今になって反対するのか分からない。もっとも、反対する人がいて正常だとは思うが・・・。
ところで、今日の知恵の書を読むと、かなり辛い思いをした人々がいて、「神も仏もあるもんか!」と声高に叫ぶ人々もいて、それを聞いた周りの人々も、一度ならず同じ気持ちなったことを思い出して賛同し、声にこそ出さなくても心の中では神様を咎めていて・・・。そんな雰囲気の中で、気骨があり、勇気のある人が立ち上がって声を上げた。
人々は、「神がいるのにこんなひどいことを見て見ぬ振りしている」と言ってあなたを咎めていますが、そんなことはありません。神様、あなたは間違ってなんかいません。あなたは、全てを大切にいとおしんでくださっています。人々は、「あなたは我がまま勝手な方で、人の気持ちなんかどうでもいいと思っている」と非難しますが、そんなことはありません。彼らこそ、もっと周りの人に優しくなるべきなんです。彼らは、自分の罪を認めたくないだけなのです。自分の立場や面子(めんつ)が大事なんです。つまり、彼らは、あなたが望まれるような回心がいやなだけなんです。あなたの寛大さ、あなたの慈悲深さに気づいたら、もっともっと、優しさと希望に満ちた人生を送ることが出来るでしょうに。
ですから、神様、心配しないでください。あなたはあなたが望まれることを目いっぱいなさっていいのです!
意地を張る。素直にごめんといえない。不利益をこうむると人を非難したくなるし、そのくせ言い訳がましい。自分には優しく人には厳しい。などなど。一筋縄ではいかない自分の困った姿を見るにつけ、神様の改革を擁護する知恵の書の言葉は重たい。
とんでもない事件に怒り、世の中が良くならないと嘆く自分がいたら、その矛先を自分に向けることを忘れてはならない。そして、足元が暗くて周りが良く見えなかっただけで、実は、自分自身の足元を照らしてもらう改革、回心こそ先決問題。そうして初めて、周りを見る目も変わり、腹立たしく思うことより、周りのすべのことをいとおしく思えるようになるのではないか。そんな「希望を抱かせ」るような知恵の書の著者との出会いだった。
神様の聖域なき改革の手は容赦なく伸びてくる。今更反対してもね・・・。