「今週は予防接種や懇談会で朝礼が出来ません。
ですからゆっくりなさってください。」思いがけない言葉に思わず「ありがとう。」コーヒー片手に新聞を読み、今時のベンゲット州についてネットで調ベてるうちにテニスの時間になった。大阪選手のテニス観戦で午前中が終わった。
コーヒーといえば、バギオ周辺でも栽培が始まっていることを知った。当時も、あちこちでコーヒーの木は見たことがあったが、換金できるようにと組織的に栽培することになったのは日本の援助によるものらしかった。
当時、今もあるらしいが、マクワウリの栽培は盛んになされていたが、少しづつコーヒー栽培にシフトしているようだった。そして、すでに製品化されていることが分かったので、値段は張ったが早速購入した。では、バクン紀行の続きをしよう。
ちょうど11時、ほぼ満員になったところでバスは動き出した。神父さんに「正確だね」と言ったら、「今日だけだ」と言って笑った。11時というのは「11時頃」という意味で、普段は満員になり次第出発するのだという。今日は幸運を喜ぶとしよう。
ベンゲット州庁舎のあるトリニダードを過ぎてしばらくしてバスはいよいよほこりっぽい山の国道にさしかかった。日本だと、さしずめ、何とかスカイラインと称して快適なドライブが楽しめるところだが、ここではそういうわけにいかない。
石ころだらけの狭い道が1500m級の尾根伝いにどこまでも続く。しかも、天気がいいので乾燥した未舗装の道路からは容赦なくホコリが舞い込む。出発前、司教館の神父さんが「今日は天気がいいから大変だ」と言った意味がよく分かった。
運転手と助手の若者はハンカチマスクをしている。まるで、バスジャックにあったみたいで何だか楽しい。乗客の誰もが押し黙っている。神父さんはこっくりこっくりバスの振動に身を任せている。マニラ出張の疲れが出たのかもしれない。
一方私は、ホコリの向こうに見え隠れする初めての山岳地帯に興味はつきず窓の開閉に忙しい。というのも、窓と言っても、ちょうど、台所にある水屋の引き戸みたいなもので、バスの振動に従って少しずつずれてくるからだ。
何よりも驚いたのは、山に木がないこと。フィリピンの山は密林。そんな密林を見たい。勝手に想像して、勝手に胸膨らませていたとは言えガッカリした。2時間を過ぎた頃、道路は更に高度を増し、やがてサヤガンというコース中最高地の停留所に着いた。
「着いたのか?」神父さんに聞くと「まだ半分しか来てないよ。休憩のためだよ」と笑いながら先に下りた。後に続いて下りて気がついた。エンジのジャケットがホコリで白くなっていたのだ。見ると誰もがパタパタとホコリを払っていた。
それぞれ、昼食のため近くの食堂に入ったり、パンを買ったりしている。神父さんと二人はすぐ上の教会を訪ねて持参のサンドイッチを食べることにした。気のいい神父さんはベルギー人の宣教師で、「帰りもまた来ると言い。自分がいなくても自由に上がってコーヒーを飲んで行きなさい」と勧めてくれた。(続く)
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