欲しいとき、手元に辞書のないもどかしさ。いま、それに似た気持ちに駆られている。軍隊で、叔父が上官を投げ飛ばした大事件の詳細を知りたいと思うが誰にも聞きようがないからだ。
一度聞いたことのある話だが、詳細を忘れた。子供たちもどうやらアヤフヤ。上官と意見の対立が原因なのか、それとも、意地悪な上官のいじめにあったのか、定かでない。
いずれにしても、叔父は、上官の命じるまま、屈辱に耐えながら、兵士たちの見守る中、服を脱ぎ、ズボンも脱がされた。そして地べたに腹ばいになるように命じる上官に従った。すると上官は軍靴で叔父の背中を踏みながら「命令に従わない奴はこうなる」みたいなことを大声で叫んだ。
上官に逆らうと軍法会議、最悪の場合は銃殺。必死にこらえていた叔父の堪忍袋の緒が切れた。背中に乗った上官の足を払いのけ、起き上がりざま上官の胸ぐらをつかんで思い切り投げ飛ばした。予期しない反乱に面食らった上官はなすすべもなく衆人環視の中をあっけなく転がった。
しかし、何の咎めもなかった。どうやら、叔父をかわいがっていた直属の上司が取り持ったらしいのだが、本当の理由をやはり子供たちも知らない。ただ、上官の一方的な非人道的な振る舞いはかねてから兵士たちからも疎まれていたのかもしれない。暗号解読のスペシャリストとして常に部隊の中枢にいた叔父の口の堅さは職業柄としても、媚びず、妥協せず文字通り真実一路、孤高の人。
おじいちゃんの大昔の武勇伝は柔道部に籍を置くのもいる孫たちには叔父のスイートメモリー。全く同じ生き方を孫たちに臨むわけではないが、自らに恥じない人生であってほしいとの老婆(爺?)心から。ミサの説教の続きのつもり。
それにしても胸のすく話ではある。御父からの栄冠、お爺ちゃんにあれ。
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