今日からただの人
昨日までは二台のパトカーが先導してくれたのに、公式日程が終わり、今日からはプライベートな日程、つまり観光旅行になるからと、たとえ司教が2人いても先導なし。2日間も張り付いてくれたのでチップをあげようとしたが、上記の理由で今朝は姿が見えず、預けていた2000ペソ(約4500円)が戻ってきた。そう言えば、昨日から返金付いている。物売りから買った帽子について、少しのほろ苦さとともに書いておきたい。
無知ゆえのボッタクリ
「300ペソ!」「ワン、トゥー、スリー、ハイ!」それは違うと言って受け取ろうとしない。今では使われていない古い札だという。何十年も昔のことではない。つい「10年前来た時の…」言い終わらないうちに、周りの物売りの仲間たちが、「10年!」と言って肩をすくめて帽子売りの支持に回った。多勢に無勢、そうなるとボクはますますムキになった。「ホテルで確かめたら使えると言った!銀行でかえてくれるから問題ない。じゃあ、もう一枚上げる」と言って脈絡なしに100ペソを追加した。受け取ったものの「銀行が近くにないから…」と困惑ぎみ。結局ボクに言い負けた形で彼は帽子を渡した。
帽子がタダになった!
30分後、旧日本軍の牢獄跡を見学してバスに引き返すと、先ほどの帽子売りが、「帽子はあげるからこれは返す」といって例のペソを差し出した。何が起こったのか解せないボクは驚いて、「いいから、取っておきなさい」と言って断った。あとで分かったことだが、昨年の12月までに新札に交換しなかったものは使えないのだという。結構したたかな物売りでもそこまでの詳しい事情は知らなかったらしい。ホテルで確かめたのはラ・ユニオンまでの切手代分45ペソの古いコインだった。「あれが使えたのだから…」という1人合点の結果、貧しい彼から大事な売り物を騙し取ったかたちになってしまった。下心はなかった分言い訳が許される感じはあるがほろ苦さは残った。
霊験あらたか
とは言っても、「千円!」と彼が言った時素直にあげればよかった、と後悔もある。それにしても、「たった10年前の紙幣が使用不可になるなど誰が想像できるか!」それはそうと、「帽子はあげる」のナゾを解いたのはアジアの教会事情に詳しい押川司教さんだった。「アンタが司教だと分かったから。」聖職者への畏敬の念が強いフィリピンならそうかもしれない。それにしても、ローマンカラーに十字架と指輪、カトリック国に敬意を表して正装で来たというのに、時間がかかり過ぎたのはなぜか?ともあれ、2度と会うこともないと思われるあの帽子売りにボクに代わって慈しみの御父から良き計らいを祈るばかりだ。
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