一泊15万円
そして、「そんな宿にボクが一泊したんです」と言ったら信用する人はいないどころか、確信をもって言えるが、冷笑を買うだけ。しかし、本当なのだ。敢えて宿と言ったのにはわけがある。ホテルのことではない。「そんなところに宿をとった」と言ったほうが正しいと思うが、正解を明かそう。病院。そう聞いてビックリする顔が目に浮かぶが、昨日ある病院で大腸検査をお願いした。12年間に及ぶベジタリアンから通常食の生活に変わったせいもあるとは思うが、この数ヶ月、通じがスッキリしない。ネットで調べてみると、「理由の一つにガンも考えられる」とあつた。健康には誰よりも気をつけていたし、職場健診もこの数年毎年同じ結果ということもあつて受診してなかつた。けなげに謙虚になって受診を決意したというワケ。宿泊費のワケは後ほど。
腹を探る
20数年ぶりに、文字通り、腹を探られる体験をした。3ミリほどのポリープが数個、6~7ミリが一つ。後者は、「ガンになるから」と切除。モニターに映し出された生々しい我が大腸を人ごとのように眺めていると、時々、ググっとカメラが動く気配に「オッ探られている」と思わず我に帰る。不思義な体験だった。それほど、痛くも痒くもないことに改めて驚く。麻酔が効いていると思うのだが、その麻酔もいつ打たれか定かでない。何よりも術後の傷口を金属製のクリップ4個で留めた時は、さすがに心配になった。「アレはどうなるんですか?」看護師さんかあつさり答えた。「そのうちお通じと一緒に出て行きます。」ボクには、小指ほどの大きさに見えたが、実際はミリ単位のもだったのかもしれない。
五万円てお釣りが
予告通り一泊することになり、病室に車椅子での移動となった。これは初体験。検査の始まりから付けられた点滴の器具はそのままなので、結局、着替えることも叶わず、検査服のままでの入院となつた。まだ午後2時過ぎのことなのに、久しぶりの非日常体験ですっかり気疲れしたせいかすぐにウトウト。しかし、入院ということで入れ代わり立ち代わりの確認に次ぐ確認。極め付けは「会計からです。検査入院ということで総額5万円程になります。」「5万円⁈」思わず声を上げた。「5万円でお釣りがくるぐらいです。」そういう問題じゃないでしょう!おかげで気持ちいい眠りを妨げられただけでなくすっかり目がさえてしまった。それでも、点滴のせいで何度かトイレには立ったが、一日中絶食していたせいかこれまでにない睡眠をエンジョイできた。
うっかり検査にも行けない
今朝7時頃だったか、採血があり、「変わったことがなければ食事をして帰ってもいい」とのことだった。9時半頃、「異常なし」ということで点滴が外され、まもなく食事が運ばれた。おかいに味噌汁と半熟卵、それに酢の物とミカンの缶詰、そしてヤクルト。軽い食事とはこういうのを言うらしいと分かった。それにしても、ザビエルにいた頃、毎日顔を出すヤクルトレディーから買っていたヤクルトが供されることに興味を感じた。民間で喜ばれているものが病院の推奨品だったことは小さな発見だった。着替えを済まして会計に急いだ。そして、ATMまで行く旨を告げて表に出た。わずか一日ぶりの外とはいえ、なんだか、すっかり春めいているのに驚いた。病院に帰りついたときは額の汗をぬぐうほどだった。支払いを済まして尋ねた。「後期高齢者は1割負担だと思っていたのですが、3割負担になっていますが…。」受付嬢が保険証で確かめた。なるほど、30%になっていて驚いた。1割負担と書かれた古い方を出すと、「所得が上がったということです。」「じゃ、ボクは金持ちになったということだね。」もう一人が加わって笑顔で見送ってくれた。それにしても、健康が保証され、昼夜を問わず至れり尽くせりの看護を受けての一泊5万円を高いと思うか安いと思うかは人による。ともあれ、「うっかり検査にもいけない」というのが正直な感想だ。
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