すっかりはまってしまった。
写真もないのだから、読む人もつまらないだろうし、今さら37年前に戻ってどうということもないではないか。自問しながら進めたのだが、次第に、具体的には言えないが、やる価値を感じるようになってきた。つまり気持ちが乗ってきたのだ。
◇ ◇ ◇ ◇
「明日が早いから」と神父さんに促されて9時頃お開きとなった。初めて耳にするようなことばかりで大変興味深いひとときではあった。みんなを見送るために外に出て満天の星空に驚いた。日本で見るような星空ではなく、とにかく星が大きすぎる。
三角形の星ではなくどの星も10円硬貨をもっと大きくしたような丸い形で、しかも空一面にちりばめられているのだ。故郷奄美で空気の澄んだ夜空には慣れていたが、こんな夜空は初めてだった。
もう一つ気がついたことがある。お休みの挨拶をしてみんなを見送った後、しばらく一人夜空のもとに佇んでいるときだ。日本だと、たとえ深夜でも、どこかで車やバイクの音がするものだ。しかし、ここではまだ、9時過ぎだというのに
「シーン」と静まりかえって人工の物音が全くしないのだ。少し大げさだが、私は「シーンというふか~い音」を聞いたとまで思った。これも初めての体験だった。
部屋に戻ってローソクを消して寝ようとした。一瞬のうちに漆黒の闇に包まれたものだから驚いたというかうろたえたと言った方がいい。何しろ、指先さえも見えないからだ。「一寸先は闇」とはこのことだと実感。
これはきっと電器のない時代に生まれた言葉に違いないと確信したときでもあった。そして、手探りで、冷たく硬いベッドに横になり息を潜めながら眠りについた。こうして長い一日が終わった。
12月18日
5時出発。外気はひんやりとして辺りはまだ暗い。空にはまだあの星たちがひしめき合っている。迎えのホセさんはすでに準備万端、私たちを待っていてくれた。神父さんと私の小さなリュックをひょいと担ぐと先に歩き出した。先頭にはランプを持ったカテキスタのジュリーさん。
石ころだらけの細い道を行ったかと思うと行く手を阻むように柵もあって、結構難儀しながら歩くこと約Ⅰ時間。ようやく辺りが白みかけたところで峠に着いた。地名はモラスでバクンとの中間点だとホセさんが教えてくれた。記念撮影をして
しばらく休憩しているうちにすっかり明るくなった。ここでジュリーさんと別れてバクンを目指すことに。それにしても、この山の中で女性が一人で帰ることに不安はないものか。「大丈夫」と笑いながら、あの重たいランプを抱えて彼女は帰路についた。
コメント