何とも衝撃的な個展ではあった
「今月28日までだが、絵の仲間の個展を見に行かないか。」10日ほど前だったか、友人からそんな意味のラインが入ったのは。昨年のクリスマス天草巡礼に同行した二人のご婦人を誘って都城美術館に行くことに。結論から言えば、政府が進める「第五期科学技術基本計画」に警告を鳴らすという衝撃的なものだった。
普通の絵画展とは違うらしいことは車中の会話から見当はついたが、会場で受けた衝撃は二つ。一つは、額に収まった作品仰天した。丸まったハチのお尻や羽全体に描かれた細かな図案、そのハチを囲うように掛けられた古びた金網片。「デジタル超監視、監獄社会の近未来像」を予見する作者の思いに迫ろうと立ち尽くした。
意図が読めないまま次の作品の前に立って衝撃は倍加した。なんと素材はすべて廃棄物。しかし、相変わらず作者の思いは読めないが、金属の鎖が絡みついた哀れな人の姿にまたも立ち尽くすことに。少し大げさだが、魔力にとらわれて、文字通り金縛り状態。ここでは、作者の悔しさみたいなものは感じたのだが、解のない問いを突きつけられているような敗北感も。
最も明確だったのはマリア様のレクイエム。予期しないマリア様が凛とたたずむ作品には作者の祈りを感じた。遠くから祈り、見守るしかできないロシアをはじめ各地の独裁者による横暴な振る舞いに「人間は愚かなんです。祈るしかないのです!」語気を強めた敬愛する宮下和尚さんの言葉が思い起こされた。
”無”でしかない廃棄物に命を与え、蘇生させてメッセンジャーとして世に送り出す。まさに、今の世における「生成の神」(北森嘉造博士の言葉)をほうふつとさせる新しい創造のわざ。都城から世界に発信する作者の先生にはおこがましいが、心からの敬意と拍手を送りたい。
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